不倫相手に慰謝料を払わせたのに…配偶者に“あとから請求”?|求償権の落とし穴を弁護士が解説!
不倫の慰謝料を払って終わり…じゃない?「求償権」に注意!
「不倫相手に慰謝料を払わせた。これで一件落着…」と思ったら――
数か月後、今度は自分の配偶者が、不倫相手から慰謝料の“半額”を請求された…
そんな“後出しトラブル”が起きることがあります。
これは「求償権(きゅうしょうけん)」という法律上の制度が関係しており、事前に防ぐ方法もあります。
そもそも「求償権」って何?
不貞行為(不倫)は、法律上「共同不法行為」とされます。
つまり、不倫した配偶者と、不倫相手の両方が損害賠償責任を負うことになります。
被害者はどちらか一方に対して、全額請求しても構いません。
ですが、そうなると全額を支払った側は、「もう一方にも責任があるだろ」として、一定の割合を請求したくなる…
これが求償権の正体です。
実際にどういう場面で起きるの?
たとえば、こんなケースがよくあります:
- 被害者(妻)は夫と離婚しないが、不倫相手には責任を追及したい
- そこで、不倫相手にだけ慰謝料を請求し、合意が成立
- しかし数か月後、不倫相手が「夫にも半分負担すべき」として慰謝料の一部を請求
つまり、「夫と妻の間では終わっていた話」が、別ルートから再燃するというわけです。
示談で「求償しない」と約束しておくのが現実的
こうしたトラブルを防ぐため、実務では示談書の中で「求償権を行使しない」ことを明記するのが一般的です。
これは、不倫相手にとってもメリットがあります。
最初から「自分の責任分(例えば半額)だけ払う」代わりに、あとから請求することは放棄する――
こうすることで、被害者側も精神的に安心でき、不倫相手側も法的リスクを回避できる、という合理的な解決になります。
求償放棄の例文(示談書の文言例)
本件慰謝料の支払いに関し、乙(不倫相手)は、甲(被害者)の配偶者に対し、今後一切求償権を行使しない。
このような条項を入れておけば、あとから配偶者が慰謝料請求されるリスクを防ぐことができます。
まとめ
- 不倫は「共同不法行為」とされ、両者に慰謝料の責任がある
- どちらか一方だけが支払うと、もう一方に「求償」される可能性がある
- 実務では、「求償しない」とあらかじめ約束しておくことでトラブルを防ぐ
- 特に「離婚はしないが不倫相手だけに請求する」ケースでは、求償放棄が非常に重要
示談書・合意書は一見シンプルに見えても、後のリスクまで考慮した設計が必要です。
当事務所では、こうした実務に即した内容を、個別事情に応じて丁寧に作成しています。まずはお気軽にご相談ください。
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